◆ 忍者のひみつ ◆

【円海】
「さて、戦国一夜漬け第三夜は忍者のひみつということじゃが……」

【円海】
「…………」

【円海】
「…………おらぬな」
【お蘭】
「あら円海、こんなところで何をしてるの?」
【円海】
「くの一がどこにもおらぬのじゃ!」
【お蘭】
「くの一って霞のこと?」
【円海】
「それ以外に誰が居るかの」
【お蘭】
「貴方の足元に倒れてるじゃない?」

【円海】
「おおっ! これは気付かなんだ!」
【霞】
「うっ……」
【円海】
「む、こやつどうしたのじゃ? 昼寝にしては様子がおかしい」
【お蘭】
「大変、うなされてるわ!」
【円海】
「馬鹿者! げえむが発売される前に死ぬでない!」
【霞】
「む……ここは……」
【お蘭】
「あ、気付いたみたいよ」
【円海】
「一体どうしたのじゃくの一?」
【霞】
「たまが……きた……」

【お蘭】
「玉?」

【円海】
「いいや弾じゃ!」
【円海】
「謎は全て解けた! 先週、凛殿が撃った弾はくの一をかすめていったのじゃ! それでくの一は今まで気を失っていたということか!」
【お蘭】
「どおりでここしばらく見かけないと思ったわ〜」
【霞】
「不覚……」
【円海】
「まあ、無事に生きているみたいであるようじゃし、このまま続けるか」
【お蘭】
「でも、苦しんでいるみたいよ?」
【円海】
「大丈夫じゃ。うめいているように見えてもこいつは元からこのような口調なのじゃ。普段の無口が幸いしたの」
【お蘭】
「そうなの、だったら安心ね!」
【霞】
「はあ…………医者……」
【円海】
「それでは忍者のひみつのはじまりじゃ!」












【円海】
「さてNINNJYAといえばすでに国際語じゃ、南蛮人でも知っている著名なきぃわぁどじゃな」
【霞】
「忍者の起源は……聖徳太子が使った『志能便(しのび)』……」
【円海】
「くの一は相変わらず言葉足らずゆえ拙僧が解説いたす!」
【円海】
「『志能便(しのび)』とは能(よ)く便りもたらすように志す者という意味にとれる。このことから聖徳太子は現代でいう諜報機関を従えておったと推測されるじゃろう」
【円海】
「じゃが、世間には聖徳太子捏造説なるものがあるくらいじゃて、これも一説というだけでいまいちはっきりせぬ」
【霞】
「……孫子、兵法……」

【円海】
「そうじゃの、確実に解かっているのは日本に伝わった孫子の兵法、用間篇じゃ。
これは後々に忍術の起源となった書物といわれている」

【霞】
「…………」
【円海】
「これ、お主もなにか喋らぬか」
【霞】
「羊かん……」
【円海】
「違う! 『用間』じゃ。間、すなわち隙を用いる兵法じゃな。孫子も敵国の情報を仕入れるために間者(スパイ)を用いたそうじゃぞ」











【霞】
「忍……強い」
【円海】
「それだけか馬鹿者! もう少し喋らぬか!」
【霞】
「暗殺……情報集める……、戦……全て仕事……」
【円海】
「ふむ、まあよかろう、忍の仕事はくの一が言ったように二種類に大別出来る。暗殺や間者(スパイ)の役割を果たす場合は陰忍といい、もう一つは忍者独特の兵法、これを陽忍という」
【霞】
「影に生き……影に死す……、死して屍拾うものなし……」
【円海】
「忍というものは影に撤するのが宿命じゃ。忍の格には上、中、下があり、忍道において名声が鳴るのは上忍ではない。忍の名人は普段はまったくそれを現さず、いざという時のみ忍の極意を発揮する。
戦に勝っても誇らず驕らず、ただ泰然と事を構えるのじゃ」
【霞】
「音もなく、臭いもなく、智名もなく、勇名もない……」
【円海】
「くの一の言葉は忍学の大著である『万川集海』に記されておるのじゃ」
【霞】
「萌え……ない」
【円海】
「馬鹿者! 萌えてこそ咲く花もあろう!」
【霞】
「…………忍は使い捨て……」
【円海】
「ふむ! 栄光も何もないとは忍者もつまらぬものじゃな」
【霞】
「猿飛佐助……児雷也……これ有名」
【円海】
「確かに両名とも有名な忍であるがな。こやつらは創作された架空の忍じゃ」
【霞】
「…………嘘……」
【円海】
「江戸中期になると歌舞伎で大がかかりな舞台装置が発達した。舞台の上に大ガマを出したり、人形を使って幽霊を演じてみえたり、舞台技術が上がったことで忍術ものがやりやすくなったのじゃ。
今の日本人の忍者の印象はこの時期に広まったものが大きい」
【霞】
「絶句……」
【円海】
「もともと無口な性格じゃからあまり意味が無いの」
【円海】
「もう一つ、忍術を広めたものとして有名なのが立川文庫じゃ。大阪にあった立川文明堂が刊行した『猿飛佐助』しりぃずは人気を博したそうじゃ。
ここは霧隠才蔵などの忍ものも創作した。ふたりとも真田十勇士として有名じゃが、この言葉を初めて使い出したのも立川文庫とされている」
【霞】
「忍……奥が深い……」
【円海】
「お主の頭が浅いだけじゃ。付け加えていうと児雷也の起源は中国の説話集であって日本人でないぞ」










【円海】
「今回はくの一が全く働いていないので最後に忍術を披露してもらうことにする」
【霞】
「…………」
【円海】
「はやく何かやらぬか!」
【霞】
「……何をするか……」
【円海】
「そうじゃな、できるだけ解かり易いのがいいぞ分身とか、変化の術とか……」
【霞】
「それでは忍法……」
【円海】
「うむ、忍法?」
【霞】
「円海変化!」
【円海】
「ちょっと待てぇい!!」
【霞】
「はああっ!」
【円海】
「しまった! これではどちらがくの一かわからぬ!」
【円海】
「更に分身!」
【円海】
「分身!」
【円海】
「分身!」
【円海】
「な、なんじゃ?」
【円海】
「分身!」
【円海】
「やめい! ややこしくなるではないか!」
【円海】
「だから、拙僧の真似をするなといっておろうが!」
【円海】
「これが円海のカラダ……」
【円海】
「こらっ! 拙僧の体を弄ぶでない!」
【円海】
「んんっ……」
【円海】
「ああっ! 拙僧の胸が胸が……やめい、変態くの一!」
【円海】
「おおっ! 拙僧の胸は……想像以上に小ぶりじゃ」
【円海】
「見るな! 見るなあぁぁ!!」
【円海】
「収集がつかなくなってきたので今日はこの辺でさらばじゃ。また来週をお楽しみに!」
【円海】
「拙僧の仕事が!」