◆ 火縄銃のひみつ ◆
【円海】
「第二夜じゃ!」
【凛】
「みなさんこんばんは、火薬の妹、古久保凛です」

【円海】
「今回のお題は火縄銃の話題すなわち銃器! 男と生まれしからには一度は憧れる代物じゃぞ」
【凛】
「火縄銃は1543年南蛮人(ポルトガル人)によって伝えられました。伝来した場所をもじって種子島とも呼ばれています」

【円海】
「当時の刀鍛冶師の技術力で銃身の筒を作るのは簡単じゃったそうじゃ」
【凛】
「でも、筒の底(後方)を塞ぐ方法がわからなくて、よく筒が抜けて、暴発していたそうです」
【凛】
「実は筒の底はネジの仕組みで閉じていたのですが、その仕組みがわからなかったのです……これが銃作りの最大の難関でした」
【円海】
「そのとき歴史は動いたのじゃ!
さて! 職人はどうやってその仕組みを作ったのか?」
【凛】
「職人は自分の娘を南蛮人に差し出し、ネジの仕組みを教えてもらったそうです」
【円海】
「そ、そんなことでよいのか………」
【凛】
「職人が娘を差し出したのは、悲劇とも美談とも言われています」
【円海】
「悲しい話ではないのか?」
【凛】
「娘は悩む父を見て、自分から言い出したという説もあります」
【凛】
「とにかく、ここからが日本の凄いところです。鉄砲伝来の一年後には近江国友で製造が始まりました。そして100年も経たないうちに日本は世界最大の銃保有国となったのです!」
【円海】
「技術立国日本!」
【凛】
「しかし、その製造技術も江戸時代の長い平和によって廃れてしまったんですよ」
【円海】
「凛殿、もうちょっと盛り上げる話はないのか?」
【凛】
「すいません。でも……事実をまげるわけには……」
【円海】
「歴史は作られるというではないか」
【凛】
「あれはそう言う意味ではありませんが……」












【円海】
「凛殿、例のものを」
【凛】
「はい、これが火縄銃です」
【円海】
「こっちに向けるでない!」
【凛】
「あ、すいませんつい……」
【円海】
「つい?」
【凛】
「撃ちたくなりました」
【円海】
「…………」
【凛】
「あら? どうしたんですか?」
【円海】
「凛殿、拙僧は少し離れるゆえ」
【凛】
「大丈夫ですよ。火縄銃というものはしかるべき手順をふまないと発射しないものなんです」
【円海】
「手順をふまないと発射できない。つまりは撃つに時間がかかるということじゃな。他にも雨だと使用が出来ないなど、色々と弱点が多い兵器だったのじゃ」
【凛】
「それを言われると……」












【円海】
「では実際にどれだけの手間がかかるのかをみていくのじゃ」
【凛】
「まず銃口を上にして銃を立ててから、火薬を入れていきます。
火縄銃は発射する弾と推進力を生む火薬が別々でしたからこのような入れ方をするんですよ」
【円海】
「これでは連発など夢のまた夢じゃ。
現代の弾丸のように薬莢に火薬が入っていれば別だがのう」
【凛】
「続いてに弾丸を入れてカルカと呼ばれる棒で押し込めます」
【円海】
「カルカはたいてい樫で出来ていたそうじゃぞ」
【凛】
「次に銃を水平に持ちかえ、火皿に導火薬を盛ります。これはさきほど筒内に入れた火薬に伝えるための点火用火薬です」
【円海】
「弾を飛ばすのはあくまで銃口に入れたほうの火薬というわけじゃ。
火皿は普段、火蓋というフタをかぶせてある。これは一種の安全装置で『火蓋を切る』という慣用句はここから来ておるのじゃぞ」
【凛】
「後は引き金を引くだけです」
【円海】
「そして、引き金を引くと火バサミについている火縄が落ちて火皿につき弾が発射されるのじゃ」
【凛】
「飛距離は700m。
放物線を描くのであればさらに伸びるでしょう」
【円海】
「おお! ちょんまげ頭を叩いてみれば戦国時代の科学力!」
【凛】
「でも殺傷能力を得るにはせいぜい200mが限界ですね」
【円海】
「なんじゃつまらぬ」
【円海】
「とりあえず凛殿、実際の威力を見るために試しに一発撃ってくれぬか?」
【凛】
「わかりました
でもどちらに撃ちましょうか?」
【円海】
「そうじゃな。この方向ならだれもいないじゃろう」
【凛】
「はいっ!」
(パンッ!)

ドサッ!

【円海】
「む? 何か倒れた音がしたのう」
【凛】
「行ってみましょう」












【鈴】
「くぅ……」
【円海】
「小山内殿!」
【凛】
「しまった! わたしの火縄銃は射程距離が三倍でした!」
【円海】
「しっかりするのじゃ! 小山内殿!」
【鈴】
「も、もう駄目だよぉ……」
【凛】
「小山内さん! ごめんなさいわたしのせいで!」
【円海】
「これはまずいかもしれぬぞ!」
【凛】
「う、嘘……それじゃわたし本当にやってしまったの……?」
【円海】
「幸いにも、ここに坊主が控えている。
もしもの時に備えて小山内殿を看取ってやらねば」
【凛】
「義父上申しわけありません! 凛は古久保の家名に傷をつけてしまいました!」
【円海】
「凛殿? 拙僧の声がきこえておるかのう?」
【凛】
「こ、これからは後ろ指さされながら生きてゆかなくては……そんな辱しめを味わうよりはいっそのこと………」
【円海】
「凛殿! 現実に戻ってくるのじゃ! 今は小山内殿の容態が先決じゃ!」
【凛】
「そ、そうだわ! まだ死んだわけじゃないんだ!」
【円海】
「わかったなら、小山内殿を介抱するのじゃ!」
【凛】
「そうだわ……小山内さん撃たれたところどこ? 小山内さん、私に出来ることない?」
【鈴】
「鈴……鈴ねぇ……甘いものが……」
【円海】
「おお! 小山内殿は死ぬ前に甘いものが食べたいらしいぞ!」
【凛】
「それならこれを!
おやつにとっておいた笹団子!」
【鈴】
「はぐうっ! んぐっ! もぐうっ……」
【円海】
「凄まじき食欲じゃ。
余程未練を残していたようじゃの」
【凛】
「ごめんなさい小山内さん………
どうか成仏してください………」
【鈴】
「はあ〜〜お腹いっぱいだよぉ……」
【凛】
「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏……」
【鈴】
「ほえ? どうしたの?」
【凛】
「火縄銃に撃たれて死なないとは! 化け物!」
【円海】
「こら! 銃を人に向けるでない!」
【凛】
「ああ……す、すいません」
【円海】
「まったくお主……そんなキャラだったのか?」
【凛】
「それにしてもどうやって小山内さんは生き返ったのですか?」
【鈴】
「鈴はお腹がへっていただけだよ?」
【円海】
「ああ、どおりで血が出てないと思ったのじゃ」
【凛】
「わかってたなら言ってください!
もう少しで尼寺に入るところだったじゃないですか!」
【円海】
「凛殿の尼姿が見れなくて残念と思ったところでまた来週もお楽しみにじゃ!」
【凛】
「出家はしません!」

おまけ

【円海】
「掲示板にてfourierさんから
日本のガラス製造について書いて欲しい
との要望を受けてちょこっとだけ説明するぞ!」
【凛】
「ガラスの製造技術は昔から日本にありましたが、その技術は室町時代に途絶えてしまいました」
【円海】
「理由は陶磁器の発達に押されたとの説があるが、断定できるほどの証拠はないようじゃの」
【円海】
「次にガラスが登場するのは16世紀に南蛮人との出会いまで待たないといけないのじゃ。そしてしばらく遅れて大陸からもガラス製造技術が伝わって江戸時代にはガラス製造技術が発達したのじゃ」
【凛】
「以上、おまけコーナーでした!」